現代に存在した無法地帯 「九龍城」
大学に入学して間もない時、学部の教授の研究テーマが東南アジアで、やたらと面白そうに話すので、僕も調べてみた。すると、世の中には様々な場所があるのだなと思ったのだが、その中で最も衝撃的だったのが香港にかつて存在した「九龍城」だ。
この場所はなんとどこの国にも属さない無法地帯だった。1899年に英国によって中国が租借された際、九龍城は香港にあったのにも関わらず、中国領とされた。だが、九龍城の権利を中国側が拒否したため、この土地は無法地帯となってしまった。
無法地帯だったからドラッグ、盗人、売春の掃き溜めといった悪人のデパートとなるかと思いきや、そうでもなかったようです。確かに治安はあまり良いとは言えなかったそうですが、商店や理髪店から自警団や学校まで存在していて、医者もいたんだとか。ここは国ではないから、何をやるのにも煩雑な手続きや手数料がいらないから、貧しい人にとっては安い給料でも城外よりも良い暮らしができると評判だったそう。
当然建築の基準法などもなく、増築に増築を重ね日中でも日の光はほとんど入らない。当時「九龍城は一度足を踏み入れたらもう出られない」と言われるほど道は迷路のようで分かりづらかった。唯一屋上が日が当たる場所で、子供はよくそこで遊んでいた。
1993年から1994年にこの場所は取り壊されてしまった。理由は主に以下のものと言われている。
・いつ壊れてもおかしくない状況だった
・そもそも無法地帯だった
この取り壊しについてはその現場に立ち会ったという人のブログがあるのでそちらを参照されたい。
この不思議な魅力溢れる九龍城を特集している本がある。幾つかあるのだが、「九龍城探訪」という本が住民へのインタビューも載っていて面白い。実際の生活、九龍城にきた経緯、これからの生活についてが赤裸々に書かれていてとても興味深い。
九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 - City of Darkness
- 作者: 吉田一郎,グレッグ・ジラード,イアン・ランボット,尾原美保
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2004/02/21
- メディア: 大型本
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